成人式の時にお母さんがあつらえてくれた、京友禅の古典振袖。牡丹、菊、鞠などの意匠が割り付けられ、多彩な種類の小紋箔があしらわれたクラシカルで高貴な風合いの着物だ。

気に入ってはいるけど袖を通すのはそれこそ成人式以来、二度目。お母さんに着付けてもらい、衣装に負けないよう少しだけお化粧も直してもらった。




午後三時。約束の時間に遅れることなく単身、春日組組長の本宅を訪れた晶さん。
お座敷じゃ畏まりすぎると、応接間に揃ったわたし達の前に姿を見せた彼は。濃紺の三つ揃いにアイスブルーのシャツ、光沢のあるえんじ色のネクタイのシックな装いで。髪も普段よりきちんと撫でつけてた。
持ち前の容姿に加えとても洗練された雰囲気に父母弟も束の間、目を奪われてたかも知れない。

「・・・今日はお忙しいところ個人的なお願いでお時間を割いていただき、ありがとうございます」

幸生は外し、上座の一人掛けのソファに座った三つ揃い姿の父と、向かいの三人掛けに座る着物姿の母とわたしに向かい、あらたまって晶さんは頭を下げた。