凪は黙ったままだった。肯定も否定もなく。
こんな事になってどう思ったのかが気になって、不安と気まずさが入り雑じった問いかけが口を付いて出る。

「なにか言ってよ・・・」

「・・・・・・あの男は、思惑無しに純粋にお嬢を想ってるのかも知れませんよ」

わたしの視線を逸らすように横顔を向け、感情の消えた声で言い残した凪の姿は。もうそこには無かった。

何を言われたのかを脳が咀嚼するまでに数秒かかった。弾かれたようにドアを押し開けてリビングへ。キッチンに戻りかけのその背中に、後ろから両腕を回して咄嗟に捕まえる。

「待って凪・・・!!」

わたしより数倍がっしりした男の背中に顔を埋めて、逃がすまいと腕に力を込めた。

「さっきのはどういう意味? まさか晶さんと結婚しろなんて言うつもり? 誰にも渡さないって言ったの凪じゃない・・・っっ」