見覚えがある白のセダンの後部シートにお母さんと座り、車は地下駐車場から地上に。エアコンが効き始めた車内はコート無しでちょうどいい。

「九時半頃には到着します」

井沢さんが運転席から、カーナビのように知らせてくれた。


「そう言えばね瀬里。昨日、大島が顔を出したのよ」

しばらくしてお母さんに話しかけられ、窓の外に向けていた顔を戻した。
昼間は事務所や関連のどこかを回ったりもしてるみたいだから、何かついでがあって実家に寄ったのかも知れない。

「少し顔付きが変わったように見えたんだけど、何かあったかしら」

艶やかな微笑みで言われ、一瞬ドキッとする。
一線を越えました。・・・とは答えられず言葉に詰まった。
そんなわたしにお母さんは柔らかく続けた。

「もちろん良い意味でなのよ。・・・あの子は瀬里の側で、感情がずい分と表に出るようになりましたからね。私はとても好い傾向だと思うの」

「お母さん・・・・・・」

思ってもなかったことを言われ、目が潤んでしまう。
凪をそんな風に理解してもらえてたのが、すごく嬉しかった。