表情があまり無くても端正な顔が言葉を待って、黙ってわたしに向く。
ひと呼吸おいて、冷静に切り出した。

「晶さんと会って話がしたいの」

凪の眸の奥を見つめて。逸らさずに。

「私も同行します」

躊躇なく低く透る声が返った。
そのつもりで言ったんだもの。小さく頷き返す。

晶さんが一ツ橋の若頭補佐だってことや。彼の担ってる役割がどうであれ。心が寂しくて凍えそうだったのを柔らかく包み込んでくれた、あったかい毛布みたいな人だった。
晶さんといることで、仮そめでもその優しさに掬われてた。甘えさせてくれる彼が。好きだった。

ただの友達になっても、晶さんは変わらずにいてくれるだろうけど。
逃げ道を残しておけばまた甘えたくなってしまう。きっと。だから。

「・・・それで最後にするから」

自分に言い聞かせるようにわたしは言った。

「承知しました」と短く答えた凪の、闇色の眸に見つめられて。わけもなく心臓が波立つ。
どことなく居たたまれなさを感じて目を伏せると。伸びてきた手が顎の下にかかって、上を向かされた。

「・・・どうして見ないんです、瀬里お嬢」