青信号に変わり、軽い震動と共に滑り出した車。
わたしの『答え』には沈黙したまま。凪は会社前の、いつもの場所で停車させた。

バッグと小さなトートを抱えてドアロックに手をかけ。気持ちを切り替え振り返ると、普段通りに。

「帰りはいつも通りで大丈夫だと思うから」

「・・・承知しました」

「じゃあ・・・行ってきます」

「お嬢」

呼び止められ、傾げた視線がそのまま固まった。
凪の顔が目の前に迫り、キスされたんだって気が付くまで十数秒。

「・・・早く行かないと遅刻しますよ」

何事もなかったかのように離れた凪が横目で素っ気なく。

「・・・!!! 行って、きます・・・っっ」

衝撃のあまり、今にも半壊しそうな顔面を懸命に持ち堪えさせ。平静を装って車を降りてから、手を振り踵を返した。

歩き出しながら片手で口許を覆い隠し、脳内で大絶叫する。
凪のばかぁっ、反則技にもホドがあるわよ~っっ。



午前中は、具合が悪いのかと井上さんに本気で心配されたくらい、仕事にならなかった・・・・・・。