凪を好きになった理由を問われたのだと捉えて、自分なりの言葉を探しながら紡ぐ。

「凪を一生わたしに振り向かせたいって思ったから」

前を向いたまま、少し遠くを見つめた。

父に引き合わされて、初めて会ったあの日。仄暗い眸に何も映してなかった凪。
極道者は何かしら過去に傷を持つものなんだって、多紀さんや身近な人達と触れてる中で、その頃のわたしも分かるようになってた。凪と似た眼をした人もいたし、他所では強面でもみんなわたしには優しかった。

凪を見た時。この人も多紀さん達みたいに笑ってくれないかなって。ふとそう思った。その眼に。わたしは映らないのかな。

どうしたら映してくれる?

そこからが始まり。
無表情で口数が少なくても、わたしと目を合わせてくれるようになって。凪にとってもわたしが特別なのは、いつからか空気で感じてた。

それでも。凪はまだ、わたしに笑った顔を見せてはくれない。
どこかに深い傷を負っていて、未だに膿んでいるのかも知れない。
だったらわたしは癒えるまで寄り添うから。

いつか凪が笑えるようになるまで。

「離さないって決めてるの」