駆け引きなんて考えてもなかった。
凪が受け止めてくれないなら。わたしがガラスの壁を壊す意味もない。
居場所だってない。それならいっそ。晶さんのものになる。
凪を好きなまま他の人のものになる。

凪は見てればいい。離してなんかあげない。
ずっとわたしの傍で。最期まで。見届けさせてあげる。

金属に釘で思い切り傷をつけてくみたいな。・・・引き攣った痛みが胸に走った。


どうにでもなればいい。
自分自身に捨て台詞を吐いて。
ドアを開け車を降りようと躰を浮かせた刹那。
左の二の腕辺りを力強く掴まれて、シートに勢いよく押し戻された。

「ッッ・・・!!」

反射的に何かを叫び返そうとしたのに。出来なかった。


凪に唇を塞がれて。