「・・・・・・その話は車に乗ってからでいいでしょう。風邪を引きますから」

凪は表情も変えずに、わたしを促してパーキングの中へと入って行く。手前に晶さんの車、奥の方に黒のミニバンが駐車されてた。

助手席に乗り込み、息を吐いてシートに気怠い躰を沈める。
まさか晶さんが櫻秀会の人だったなんて。偶然でも、まるで運命に弄ばれてる気になってしまう。
・・・ああでも。最初からどこか。似てたのかも知れない、凪と晶さんの空気は。闇のように静かで、月のように仄か。いつでもしっとりと、わたしを包んで。

もうこれっきりにするつもりで会ったのに。
見えない糸を解きかけた手を、自分で止めてしまったこと。
違う色の糸がもう一本。・・・繋がっていたこと。

散らばったピースを拾い上げながら、はまる場所を探し歩いてる。
そんな頼りない自分が歯がゆくて・・・ひどく苦い。

「・・・どうしてわざわざ凪がここまで来る必要があるの。帰らないって言ってるわけじゃないし、そこまで干渉されたくない」

晶さんと。躰を重ねてるっていう罪悪感がどうしようもなくて。ウィンドウの外に顔を背けた。