カウンターテーブルに並んだ、ペスカトーレ、コーンクリームスープ、マグロとアボガドのカルパッチョ、バーニャカウダ。レトルトでも冷凍でもなく全部アキラさんの手作り。しかも盛り付けがお店で出てくるみたいな。

「昔、ダイニングバーで働いたことあって見よう見真似」

涼しそうに言う。

どれも想像を裏切らない出来栄えで、最後には生クリームたっぷりの珈琲ゼリーまで。これまでの気持ちも十分に込めて、お礼を口にした。

「ごちそうさまでした。本当に美味しかったです」

「良かった。・・・またご馳走するよ」

いつもだったら、笑って『楽しみにしてます』って云えた。わたしは少し目を伏せて、首を横に振った。

「アキラさんに甘えてばかりもいられないから・・・」

「こんなの甘やかしてるうちに入らないよ」

言いながらカウンタースツールから立ち上がり、わたしの手を取ってリビングスペースのソファへと移動してきたアキラさんは。座らせた隣りに自分も腰を下ろして、わたしの顔を覗き込む。