当然わたしは狸寝入り。壁の方を向いてベッドの中。

「・・・お嬢さん、失礼します」

外でくぐもった声がして。ドアが開く。入って来た凪(なぎ)は、ベッドの傍まで来ると、少し屈むようにしてわたしの耳許の近くで、ちょっと低いけどよく透る声を発する。

「そろそろ起きてください。珈琲も淹れてますから」

それから遮光カーテンを遠慮なく開け放って、部屋に一気に光りが差し込んだ。

「んー・・・っ」

わざと、今が寝起きです、みたいな腑抜けた声で伸びをして。眠そうに。

「・・・おはよ、凪」

「おはようございます、瀬里(せり)お嬢さん」

上半身を起こしたわたしに目礼すると、凪は何事もなかったように出て行く。
ちょっとセクシーに、キャミソールスリップにしたのに。
全く動じないなんて、相変わらず手強いんだから。