お父さんは凪に自信と誇りを持たせようと、わざと他所の組に預けたのかも知れない。
お母さんは。気持ちばっかり先走ってるわたしに、凪を支えていくにはまず自分の足でしっかり立つことだと、気付かせたかったのかも知れない。

凪の声を聴いていれば分かる。
いつも何かを押し殺したように感情を抑えた話し方だったのに。堂々と、揺らぎも遠慮も引け目も感じない。

それが伝わってきて。・・・切なくて溢れた涙。

「・・・泣かせるつもりは無かったんですが」

伸ばされた指がやんわりとわたしの目尻を拭う。

「あとで恨み言も聞きます。・・・今は我慢して下さいお嬢」

俯かせていた眼差しをそっと上に向かせれば。口許に仄かな笑みを滲ませる凪の顔がそこにあった。

高二で出会ってから初めての笑みが。確かにそこに。