ともあれ上がってもらい、奥の部屋でラフなルームウェアに着替えてくると、凪はリビングに立ったままで所々に視線を巡らせていたようだった。

部屋の中がゴチャゴチャするのは嫌いで。出来るだけシンプルな見せ方にしたつもり。
キッチンに備え付けてあったカップボードがホワイトだったから、テレビ台やラックも色を揃えたのと、三人掛けの布張りのソファは刺し色で赤に。窓際には背の高いパキラの鉢植えを置いてみたり。

裾の方に大ぶりな花模様が線で描かれた生成り色のカーテンも気に入ってるし、全体的な雰囲気としては女の子ぽい・・・とは思うんだけど。

三年近くも一緒に暮らしてたのに、初めて恋人を自分の部屋に招いたみたいな気恥ずかしさも感じる。・・・なんかもう色々といっぱいいっぱいな自分。心臓は変にどぎまぎするし、波打つし。

「・・・えーと。凪、ご飯食べる?」

さり気なくキッチンに立ち、少々遠慮がちに声をかけた。 
鶏肉も冷蔵庫の中で解凍しちゃってる。好きな人に初めて振る舞う料理が親子丼ってどうなのって思うけど。もうしょうがない。

こっちを見た凪は僅かに目を見張り。でも変わらない表情で「・・・頂きます」と返事が返った。

「あ、じゃあ座ってテレビでも観てて? 大したものは出来ないから期待はしないでね?」

照れ隠しが200%でわざと素っ気なく言えば。

「お嬢の手料理なら何でも構いませんよ」

見つめる眼が笑ってる。気がした。