凪の31回目の誕生日の前までには無事に運転免許も取れた。
ペーパードライバーにならないよう週末に乗り回してるコンパクトカーには。お父さん、本条さん、多紀さんに、どういう訳か幸生までがくれた交通安全のお守りが、ルームミラーに4つもぶら下がって。


お手伝いさん任せだった部屋の掃除も洗濯も、自分のことは自分でするようになった。会社に持って行くお弁当も、時短料理をフル活用して自分で作ってる。
最近はお菓子作りにも挑戦してて。フルーツタルトを作ってみようかって密かに思案中。


凪は支倉の若の眼鏡に適ったらしく、警護だけじゃなく側近的な役割を担う扱いをされるようになったって本条さんから聴いた。運がいいって。

一段一段、しっかりその足で階段を昇ってる。追い風だけで結果になるほど甘い世界じゃない。凪の努力の結果なんだからすごく尊敬する。




まだ誰にも言ってないけど、来年の春になったら。今度こそ一人暮らしをするって決めてた。今の会社に電車通勤が出来て、実家からもそう遠くない物件を探すつもり。
本当の意味でちゃんと自立して。それでやっと凪を支える奥さんになる資格をもらえる。そう思ってる。

戻ってくるはずの32回目の誕生日は。褒められる自分で凪を迎えたいの。
あと一年。
きっと、あっという間の一年。