それが単なる好奇心に見えたのなら、適当に誤魔化したと思う。だけど彼女は、自分が秘密を打ち明けてもらえるに値する友人なのかどうかを試してる。そんな気がした。

もし。会社で漏らされれば当然、解雇される。まさか極道相手にSNSで拡散するような真似はしないだろうけれど。

彼女を信用するか否か。天秤にかけて惑う。
これまで他人には一度も話したことは無かった。知られないよう浅い付き合いを重ねた学生時代の友達とは、ときどきラインをやり取りする程度で。結衣子とも、会社を辞めれば疎遠になるだろうと普通に受け容れていた。
 
口を噤んでしまったわたしに「ムリには訊かないけどねっ」と、わざとおどけて見せた彼女。

「ほら、セリは社会人になってから出来た初めての友達だし、この先もずっと付き合っていきたいしさ。それでちょっと訊いてみよっかなってだけ。気にしないでい・・・」

「極道の娘。・・・って言ったらどうする?」

遮るように。結衣子を見返して、わたしは低くそう口に出していた。
明日から会社で避けられようと、知れて解雇にされようと。恥じることじゃない。

だって。わたしは凪の、極道者の妻なんだもの。