今日は、久しぶりに結衣子とプライベートで会っていた。
今年の春、彼からのプロポーズを受け来年の年明けに挙式を予定してる彼女は。寂しい限りだけど年内で退職が決まっている。
結婚式の準備もひと段落して、ランチがてらブラブラとウィンドウショッピングでもしないかと、週末に誘ってくれたのだ。


「でさ。セリは遠恋の彼氏はどうなの、会ってないんでしょ? 平気?」

駅に併設された大きなショッピングビル内のカフェで。テーブルを挟んで向かい合った結衣子がアイスティのグラスにストローで口を付けながら、アイメイクばっちりの瞳をこっちに傾げる。

「うん・・・まあ。でも様子を知らせてくれる人もいるしね」

「もう一年くらい経つっけ? あたしだったら連絡も出来ないとか、耐えらんなくて絶対ムリだなぁ。それも三年間なんてさー、セリはすごいよねっ」

溜め息雑じりに感心された。自分ではすごい事をしてるつもりは全然ないけど。曖昧に笑って返す。
三年でも五年でも。辿り着けば得られるものがそこにあるなら、前だけ見て足を踏み出す。一歩、また一歩って。

どうしようもなく寂しくて、うずくまって立ち止まった時もある。凪に会いたくて会いたくて。道を外れてしまおうかと思ったことも。それでも。凪が頑張ってるのはわたしの為。凪の為に自分はしっかり地面を踏みしめて。そこに向かって真っ直ぐ歩かないと。

堂々と凪を抱き締めてあげられない。
お帰りって、笑ってあげられない。

凪の想いに応える自分でありたいから。・・・平気じゃなくても『平気』。素直に強がってる自分はわりと嫌いじゃない。胸の内でクスリと零す。