お父さんの言いたいことは理解できたし、極道がシビアな世界だってことも知ってるつもりだ。
実力主義で失敗が赦されない白か黒かのセカイ。凪にこの道しかないのなら。底辺で泥水をすすって生きていくか、上を目指す以外ないことも。

知り合いの組に出向かせるっていうのも、お父さんなりの愛情だって分かってる。普通の父親だって、娘の結婚相手の収入や将来性を心配するんだろうから。

凪が一人前の極道になることが結婚の条件。言われそうだと予想できた中でも、いちばん真っ当なものだった。

わたしは胸の内で深く息を逃して。心を決める。
それで許してもらえるなら言う通りにしよう。
凪もそれなら不義理じゃなくなる。負い目も引け目も要らない。
・・・大丈夫きっと凪なら。


「分かったわ。それで筋を通して凪と一緒になる」

お父さんを真っ直ぐに見返して、わたしはきっぱり答えた。