「まあ親としちゃあ、高津さんのような覇気のある男と添わせたいとは思いますがね、こればっかりは娘の意思だ。あとは二人で話すのが筋ってモンでしょう。狭いとこですが楽にしてって下さいよ」

特に愛想立てるわけでもなく、父親と組長の威厳を保ったまま、お父さんはのっそり体を揺らして立ち上がる。お母さんも艶やかな微笑みだけを残し、二人が部屋を出て行った。

残されたわたしは。それでもやっぱり緊張してたんだろうか。知らず詰めていた息を、小さく吐
き出していた。

「着物すごく似合ってるよ、瀬里」

晶さんもよそ行きの澄ました表情が消えて、いつもの気安い空気に戻ってる。

「・・・晶さんがスーツ着てるの見るの初めてですね」

わたしが視線を傾げると、涼やかな笑みを覗かせた。

「俺は俺だけどね」


それから。

晶さんとわたしは。しばらく二人で見つめ合った。
次に口を開いたら。砂時計の砂が落ち始めるんだろう、下に向かって。終わりへの刻(とき)を刻むために。

黙ったまま。目と目だけで繋がってた。

逸らしたら。
解けてくだろう、途中から結ばれた・・・この“赤い”糸も。