エレベーターが20階に着いた。

私は酔って、足元が不安定な専務の肩を支えて歩いた。

「専務、頑張って歩いて下さい。もう少しです」

「う、うん、…っ、たか、高瀬か?」

「高瀬です。歩けますか?」

「ああ…」

私を一度確認した専務は、安心したのか、不安定ながらも部屋まで歩いてくれた。

「ここ…」

さっき天城さんから、預かった専務のタキシードから抜いたカードキーをかざした。

Pi

小さな音と共に、部屋の鍵が開いた。

バタンッ

専務を抱えて部屋に入った。

「せ、専務。着きましたよ、もうちょっとです」

「高瀬、高瀬、ほんとに高瀬か?俺、酔ってるのか…」

専務は何度も私を確認した。

「高瀬です。大丈夫です…か?」

「あぁ、そんな酒弱くはないんだけどな、っ…頭が痛いっ…」

「強いお酒飲んでたらしいですよ、大丈夫ですか?…あっ…」

横になってもらおうと、ベッドまで専務を連れて行った私は、バランスを崩してしまい、そのまま一緒に倒れこんでしまった。

専務が私を押し倒した状態になってしまった。


この状況を…どうしたらいいんだろう…
身動きが取れなかった…

「っ、せ、専務…」

両手で専務の身体を持ち上げようとしたけれど、180はある専務の身体がそんなに簡単に動く訳もなく…もがいていた。この状況から逃げなくちゃ…いけない。


「高瀬…どうして今日逃げた…」

私の首元で顔を埋めるようにした、専務が呟いた。

「っ…あ、あの、それは…」

言葉が出ない。

「匠に…何を…言われ…た」

専務が顔を上げた。
見上げた専務の顔は、お酒が入ってるせいか、艶っぽく見えた。

ダメ…

これ以上近づいたら…

専務が私がはめていた眼鏡を外し、片方の手で頬をなぞった。

「せ、専務…」

「綺麗だ、…高瀬…俺は、ずっとこうして、たか…ったの…かもしれない」

「っ…んっ…」

眼鏡を床に落とし、その手で頭を押さえ、そのままキスされていた。