「な、何それ…」

「怜の所もね、割と大きな会社経営してるの。怜長男だから、ご両親は会社を継いでもらえると思ってたらしいんだけど、弁護士になるって家飛び出したのよ、怜」

「そうなんだ…」

「夏帆は、怜が好きだったんじゃなくて、怜の地位が好きだったのよ。会社継がないなら別れるって、それっきりよ。ひどくない?」

「うん、まぁ。自分も社長令嬢なのにね、相手の地位なんているの?」

「何言ってるの、鏑木物産って…」

鏑木物産?あ、思い出した。

「思い出した?」

「うん。あそこって長男いたね」

「そ、まだ若いけどいるでしょ。長男が会社継ぐから、自分は出て行かなきゃいけないでしょ?だからどうしても社長の息子じゃないと嫌なのよ」

「今では怜も、国際弁護士としてやってるでしょ?ご両親の会社の顧問弁護士だし、バリバリでしょ?そこに目つけて連絡が来たのよ、夏帆から」

「嘘っ…」

「節操ないよね。上があるからと、出し惜しみしてたら、周りが結婚していっちゃって残ったのよ。それで焦ったみたい。久しぶり!って連絡来たらしいよ」

「それで、怜さんどうしたの?」

「無視したんだけど、しつこかったらしいの。私が振ったから根にもってるのね、素直じゃないんだから、って」

「うわ、最悪…」

「私に迷惑かけたら、って気にしてくれてね。いい加減にしてくれ、って父親に話したらしいわ、あんまりしつこいと訴えるって」

「あちゃ…痛すぎる…」

「だから、向こうも焦ってんのよ。周りが早くに結婚してるから、27で残ってるの、あの夏帆だけなんだって」

「そっか…」

それを聞いても私にはどうする事も出来ない…

「はい、これ」

「え?る、瑠璃?!」

瑠璃の手には私がクローゼットにしまったドレスが握られていた。