「出ないじゃない!」

瑠璃は、エレベーターに乗ってから電話をかけ続けたが、涼香が電話に出る事はなかった。

「天城!すぐに涼香の所に行って!」

駐車場に停めた車の中で、明日のスケジュールを確認していた天城は、突然の瑠璃の登場に慌てた。

「瑠璃!?早すぎないか?」

「いいから早く!涼香の所に連れてって!」

瑠璃は自分から車のドアを開けて乗り込んだ。
あまりの気迫に、天城もエンジンをかけて、涼香の元へと急いだ。

「なんかあったのか?」

いつもの瑠璃ではない様子に、天城もバックミラーを見ながら、話しかけた。

「あった、とかじゃないわよ。なんなのよ!!夏帆が見合い相手なんて最悪じゃない!」

「み、見合い?」

話が見えない天城は、瑠璃に聞こうとしたが、それどころではない様子がして、それ以上聞く事を止めた。

「冗談じゃないわよ…」




♪♪♪♪♪♪♪

誰?
電話?

ディスプレイに表示された、瑠璃を確認して、携帯を置いた。
かけてこないで…

♪♪♪♪♪♪♪

しつこいな、出たくないんだって…

家に戻ってきてから、どれだけ飲んだんだろう。
新しく開けたウィスキーのボトルが1本転がっていた。