「如月物産の…」

「この間、モデルをお願いしたんですが、残念な事に…」

「あぁ。あの時はごめんなさい。私、一般企業のモデルはしない事にしたの。悪く思わないでね」

「いえいえ、そんな…」

探るように話しかける氷室に、警戒を強めながら、横にいる男性に話しかけた。

「そちらは?」

「あ、すみません。如月物産の専務、如月蓮です。よろしく」

「あぁ、あなたが専務さん。息子さんかしら?」

「はい、そうです」

どうして?
この人が専務だって言うなら、どうして涼香がいないの?
それに、この女誰よ。

ん?ちょっと待って…
鏑木夏帆じゃない…
なんで?

「そちらの方は?」

瑠璃は、その女が誰か知っていて、あえて隣にいるのが誰なのか聞いた。

氷室がそれに答えた。

「鏑木物産の社長のお嬢さんの夏帆さんです。今日は、如月専務と軽いお見合いでして…」

「え?お見合い?」

瑠璃は耳を疑った…
何、お見合いってなんなの?

「匠、勝手な事…」

「初めまして。夏帆です。モデルのRURIさんに会えて嬉しいですぅ」

夏帆が、蓮が喋ろうとした言葉を遮った。そして、握手して下さいと、ミーハーな態度を示した。

瑠璃は、初めましてじゃないくせに、何言ってるの?しらじらしいと思いながら、話を続けた。

「じゃ、お邪魔しちゃ悪いので、私はこの辺で失礼しますね」

ニコッと笑ってその場を後にした。


瑠璃は、柳井社長を見つけると、用事があるので、と帰る事を伝え、会場を後にした。そして、駐車場で待っている天城の元に急いで向かった。

なんなの!
夏帆がお見合い相手って!

瑠璃は、駐車場に向かいながら、涼香に電話をかけていた。