…永遠に続く事はなく、エレベーターは10階に到着した。

「受付けはあちらですね…」

アスランのパーティの受付け案内が、エレベーターを降りてすぐに分かるところに記されていた。

専務とそこへ向かった。

歩けば、近づけば、近づくほど心が警笛を鳴らす。

会いたくない、専務のお見合い相手なんか、見たくない。
このまま帰りたい、そんな衝動に駆られた。

向かっていると、目線の先に室長が立っているのが見えた。

あぁ。終わりだ。
そう思った…
だって、室長の横に立っている、上品な女性が見えたから。

私は、頭を下げた。

「室長、遅くなりました。専務をお連れしました」

「ありがとう。悪かったね」

「いえ…」

「匠は一人か?ん?そちらの方は?」

専務が、室長の横に立っている女性に気がついた。
私は専務から離れるように、少しずつ下がって行っていた。

「あぁ、彼女は鏑木物産の社長のお嬢さんの夏帆さんだよ」

「こんばんは、初めまして。鏑木夏帆です。蓮さんに会えるのを楽しみにしてたんです」

「あ、こんばんは。今日は匠と、こちらに?」


何も知らない専務は、夏帆さんに話しかけた。

「何言ってるんだ?蓮。今日のパーティ、お前が夏帆さんをエスコートするんだよ」

「は?匠、何言ってるんだ?え?」

「昨日、社長から連絡があって、言ってたお見合いだよ」

「ごめんなさい。私が父に無理に頼んだんです。あなたと会いたいと」

「いや、今日は…」

専務が後ろを振り向いた。
私は目を合わせる事が出来ず、頭を下げた。

「では専務、私は失礼させていただきます」

言葉をかけられる前に、帰る挨拶をした。
室長にも伝えた、帰りますと。

「いや、高瀬っ…」

「秘書の仕事はここまで、です。パーティ楽しんできてください。失礼いたします」

夏帆さんにも頭を下げて、私は顔を見る事なく、足早にエレベーターに向かった。

「待てよっ、高瀬!」

「蓮!夏帆さんと行ってくれ、社長命令なんだ」

室長が専務を引き止めてる声が聞こえてきたけど、私は後ろを振り向く事なく来たエレベーターに乗った。