「もしもし、高瀬です。電話いただい出たみたいで、申し訳ありません。何か急用でしょうか?」

「…っ、急用って!ずっとかけてたんだぞ?何かあったのかと思うじゃないか!」

「申し訳ありません。電池が切れたんです。出先だったので充電出来なくて…」

「っ、わ、悪い。今日の事を確認したくて…。時間大丈夫なんだな?」

「はい、大丈夫です。約束の時間に会社には向かいますから。専務も遅れないようにして下さいね」

一緒にパーティには行く事はないですけどね、専務。

少しの間があった後、専務が仕事とは違うトーンで私に話かけた。

「…高瀬、その、パーティが終わった後だが、時間取れるか?」

「え?じ、時間ですか?」

「あぁ、時間取ってほしいんだ。って言うか、開けとけ。分かったな?」

専務が何を考えているのか、分からなかったけど、何故だか、私の頬に涙が伝った…。

「…はい」

「よし、それが言いたかったんだ。じゃ、会社で待ってるよ」

「はい、了解いたしました」


電話を持つ手が震えていた。
泣いているのを気付かれないように電話を切った。
湖に映る富士山を見ながら、私は人目に触れないように泣いた。