匠との高瀬の話をした次の日、事は起こった。

高瀬が明日のパーティの時間を確認してきた。
一瞬、パーティの話と言われて、キャンセルしたいと言うのかと思い、ムッとしてしまったが、時間の確認をしてきたと言う事は、明日は来るんだろう。

高瀬と話をしていると、昨日匠と話していた事が頭の中を支配していく。

本気になるな、気をつけろ。

本気?
なにが本気になるんだ?

高瀬と接していると、俺の中で気持ちが膨らんでいたのは事実だ。
それが一体何なのか、答えは決まっているとでも言うのか。



ガタン

隣の部屋から大きな物音が、聞こえてきた。

ん?なんだ?
妙な胸騒ぎがして、扉を激しく開けた。

バタン

目を疑った。
匠が高瀬の顎に手をかけ、キスしようとしていた。

「匠、何やってんだ!」

俺は匠につかみ掛かった。

匠は顔色一つ変えず、「冗談だよ。冗談」と笑った。

掴んでいる俺の手も振りほどいた。

そして、捨台詞に「からかい甲斐があるから」とまで。

頭に血がのぼるとはこの事を言うんだろう。

「俺に殴られる前に、ここから出て行け!」

弁解するでもなく、匠は部屋から出て行った。

匠の事を謝った俺に、高瀬は「いつもの事」と言った。
いつも、いつも…くそっ!

バタン!

俺は、勢いよく部屋から出て行った。