明らかに、氷室室長は私の何かを掴んでいるようだった。表情は一層険しくなった。

「…氷室室長….、何か誤解されていませんか?」

誤解と言われて、室長の目が見開いた。

「室長でいいって言ったよね?氷室はつけなくていい、なんなら匠でもいいと?」

「いや、それはさすがに。室長、私は
水野部長から、仕事は指導していただきました。その時に、厳しくしていただいたお陰で、今の私がいると思っています」

室長の勢いに負けないように、精一杯の強がりを見せてみた。


その時、

エレベーターが1階に着いた。

助かった。
そう思った。

ドアが開いた。

「では、失礼いたします」

頭を下げて降りようとした、瞬間

「私の目は誤魔化せない、って言いましたよね?」

室長に手首を掴まれ、そのまま今降りたエレベーターに引き戻され、室長の胸に抱かれていた。

「え?」

驚いた私は、室長の腕を振り解こうとした。しかし、男の人に勝てる訳もなく…

「このまま、来てもらうよ」

室長はそう言うと、私を役員専用の地下駐車場に連れて行った。