参ったな…

声は聞こえたが、明らか私を呼び止めたのではないと、分かってるだけに振り向く事も出来ず、部屋を出た。

何に参ったんだろう…

ブルル、ブルル

机の上で、携帯のバイブのすれる鈍い音がした。
誰からだろう?そう思いながらディスプレイを見ると、瑠璃からメールが来ていた。

【この間話してた、パーティの件】

パーティ…!
秘書の事で、すっかり忘れていた。
身代わりパーティの事!

メールには、場所や出席理由等書かれてあった。
アスランco.の創立……
アスラン???

ちょっと待って…

さっき専務にスケジュールを読んでいる時に見ていた紙を乱暴に手に取った。
聞き覚えのある会社名を前に、頭が真っ白になった。

「あー!!!!!」

たぶん、おっきな声、ううん、叫び声に近かったと思う。

紙を握りながら叫んでいた。

ガチャ!
ガチャ!

「どうした!」
「どうしたんです?」

「え?あ、あ、すみません!」

私の声の大きさに専務が部屋から飛び出してきた。
そして、反対のドアからは氷室室長が…

「す、す、すみませんでした。個人的な事で大声出してしまいました」

盛大に頭を下げて、謝った。

「ちょっと失礼します」

2人から何か言われる前に、トイレに逃げ込んだ。


落ち着いてから、瑠璃に電話をかけた。

「もしもし?涼香?メール見た?」

「う、うん。見た、あれやっぱり行かなきゃいけない?」

ダメ元で聞いてみた。
そして、撃沈…

「無理に決まってんじゃん。だから頼んでるって行ったじゃない!ごめんって」

はぁ。そうだよね、うん。

「うん、ごめんね。また連絡するね、うん。あ、うん」

取り留めもない話をして電話を切った。

はぁ。

大きなため息が出てきた。

専務が、今日会食するのが副社長だから、それなりに近い関係よね、って事はもちろん、パーティは出席だよね。
スケジュールに載ってなかったような気もするけど…ん?載ってなかったらしないかも?
そうよ、きっとそうよ!

「なんか、前が開けてきたかも?」

少し上向き気分で、自分のデスクに戻った。

専務と氷室室長は怪訝そうな顔をして、私を見ていたけれど…