日本酒で、酔っ払ってしまったルイをホテルに送り届けた頃、匠から電話がかかってきた。

「今いいか?」

「あぁ、ルイをホテルに送ってきたから大丈夫だ。さっきの事だな?」

「あぁ、そうだ。とりあえず、総務の水野部長に聞き込んだんだが、なかなかの人材らしいぞ?」

「どう言う事だ?」

「水野部長が言うには、スケジュール管理等は他の誰よりもしっかりしていると、書類やメールの管理もミスがないってさ」

「そうか…」

報告を聞いて、秘書に欲しいと思った。
会った事はないが、仕事を任せたいと…

「どうする?俺から水野部長に話を…」

「いや、俺がする。匠、ありがとう、助かったよ」

いつになく、俺が動くと言ったから匠は驚いているだろう。電話口で笑った声が聞こえたようだった。


匠との電話の後、水野部長…俊哉叔父さんの所に出向いた。俊哉叔父さんは、社長…父の妹の旦那さんで、俺は甥にあたる。
叔父さんは驚いていたが、いつになく真剣な俺の顔を見て、何か重要な事があったんだろうと、遅かったが家に入れてくれた。

そして、総務の高瀬涼香について話をした。
もう、回りくどい話はしたくなかったから、単刀直入に。
秘書、専務秘書に欲しい、と。

もちろん、叔父さんにしてみれば、接点がないだけに何故?と思ったと思うが…
深くは聞かず、黙って話を聞いてくれていた。

叔父さんは、彼女に抜けられるのは困ると言っていたが、頭を下げた俺を見て決心してくれた。仕方ない、と。
そして、秘書、お前の秘書は務まるだろう、と。

そして、無理難題として、週明けの異動を頼み込んだ。

「小さい頃から強引に話を進めるのは、変わってないな。彼女に辞められないように気をつけろよ?」

と、言って快諾してくれた。