『蓮、あの子を絶対秘書にしないと、ここで仕事やっていけないぞ?俺も、英語で対応するのも嫌だからな?』

『ルイ…そうだよな…』

ルイが言うのも分かる。
俺がフランスにいる時は、窓口が俺だったから誰も気にも止めなかったんだろうが、日本に帰ってきた以上、やりとりはルイとこっちにいる誰かになる。
俺や匠がいる時はいいが、そうはいかないし、膨大なメールや郵便物を捌くのにも限界がある。

うーん、どうしたものか…



ノックの後、匠がノートパソコンを持って入ってきた。

『失礼します。支社長、これを見ていただけませんか?ピックアップしました』

ピックアップしたと、言って持ってきたのは、如月商事の全社員のリストだった。
もう、【総務部、女性、20代】で検索をかけていた。

「な、匠」

「どうした?蓮」

「なんで、20代限定なんだよ」

「支社長が飛びつく=若い、じゃないか?」

「お前、それルイに言うなよ、ここにいられなくなるぞ」

「ククッ、分かってるよ」

俺と匠が、そんな話をしている間、ルイは画面を凝視していた。


『彼女だよ!間違いない!』

ルイが一際大きな声を出した。

匠と俺は画面にかぶりついた。


【高瀬涼香 23歳 総務部勤務】


と、表示されていた。