楽しみにしている俺に匠は、余計な事を伝えてきた。

「高瀬がお見合いしたらしいよ?蓮」

な、なに?

「見合い?な、何を言ってんるだ?」

「この間、見たんだよ。しかも、SEIWADOの社長秘書の園田さんだよ、相手は…」

「そ、そうか…」

「結婚するらしいよ。仕事辞める話までしてたし…」

くそっ、遅かったと言うのか?
本人から聞かないと…


高瀬が休養明けの出勤の日、俺は高瀬が来る前に会社に来ていた。

あの日の、彼女が高瀬かどうかを確認したくて…

時計を見ながら、専務室で待っていた。
そろそろ、彼女が出勤する頃だな…
賭け、だった。高瀬が、俺が思うように動くか、どうか…

そして、賭けに勝った。

高瀬が、風邪ひきますよ、と俺の前に手を出してきた。
とっさにその腕を掴んだ。
高瀬は、離してと言ったが俺は離さなかった。そして自分の方に引き寄せ、押し倒した。

首元に顔を寄せた。

そして、俺は見た。
耳の裏にほくろがあるのを…
やっぱり、高瀬…君だったんだね。

「見合いしたん、だって?」

違うと言ってくれ…
俺の願いも叶わず、高瀬は何も答えなかった。

くそっ、何もかも遅かったのか!

俺は、高瀬の腕を掴んで、外へ連れ出した。