アスランのパーティの後、俺は高瀬と間違えて、夏帆さんと一線を超えてしまった。
酒に酔っていた、なんて言い訳が通用する訳もなく。

男として最低だ、俺は。

高瀬に気持ちを伝える事も、そばにいる事も出来なくなってしまった。
それを自分で招いてしまったとは、考えたくもなかった。

しかも、好きでもない女性と…何て事だ。

匠は、結婚すれば済むだろう、お互いいい大人なんだから、と。

俺は匠には全てを話していない、彼女だと思った女性が初めてだった事を。
俺がなかったことにすれば、夏帆さんを傷つけてしまう、そうなれば如月もただじゃいられないだろう。

心を捨てる覚悟をしていた。



結局、一睡も出来ず月曜日を迎えてしまった。
会社で、高瀬の顔を見るのが辛い。
だが、上司として避けられる訳がなく、俺はどうやって仕事を進めて行ったらいいんだ。

…考え事をしながら、会社に着いた俺の目に入ってきたのは、車の中で、助手席に座らせた高瀬の頬を撫でながら、高瀬を愛おしく見ていた匠の姿だった。

俺の決意なんて、こんなものか…
車から飛び出していた。

「匠!何やってるんだ!」

匠の胸ぐらを掴んでいた。
誤解だと、匠と高瀬に言われて、ハッとなった。

「今の俺が怒れる立場なんかじゃないよな…」

掴んでいた手を離し、振り上げていた拳を下ろした。

何をやってるんだ、俺は。

背を向けた、匠が怪我したから高瀬を病院に連れて行くと、走り去った。

怪我?大丈夫なのか?

気にしても仕方ない事だと思いながら、気にせずにはいられなかった。