「専務…さっきのお見合いの話なんですけど…」

「え?見合い?あれってまじだったの?今違うって言ってたじゃないか…」

もの凄い勢いで、専務が迫ってきた。
焦り…が滲み出ていた。

「あ、いや、そうじゃなくて、お、お見合い話、あれは嘘なんです。違うんです。知り合いだったんですけど、室長に絡まれてると思ったみたいで、園田さんが助けてくれたんですよ」

「そうなのか?匠の話じゃ、仕事の出来る奴らしいけど、本当に高瀬と関係ないんだな?」

「は、はい。知り合いなだけです」

専務は一安心したのか、私をもう一度腕の中に抱いた。そして、顔を見つめて…

「高瀬…いや、涼香。ずっとそばに居ててくれ」

「はい、専務」

「蓮」

「え?」

「専務じゃない、蓮」

無理、無理無理ー!

「い、言えないっ…」

「言う練習しておいて、涼香分かったね?」

じっと見つめられる。

「うっ…」

言える訳ないじゃない。
ハードル高いって。

専務、いや蓮さんって言うか、蓮って言える気がしない…の部屋で少し過ごしてから、私達は会社に戻った。

会社に戻るまでの間、私が専務から『蓮』と呼ぶように練習をさせられたのは言うまでもない。