どれほどの時間が経ったのだろう、部屋にある時計の秒針が動く音だけが、部屋に響いていた。

「…高瀬、信じていいのか?嘘じゃないよな?」

専務が後ろから抱きかかえる形で、専務の腕の中にいた私は、頷いた。

「専務、好きです」

その一言を言うのに、どれほどの時間をかけたのか。

「それを聞いたら安心したよ」

専務は私を離す事はなかった。

「せ、専務?そろそろ…その、か、会社に…」

少しして私は、現実に戻された。

会社…
出てくる時に、室長に見つかり、無視してきた事。
かかってきた電話も無視した事…

許される事ないよね、きっと。
絶対怒ってるはず。

「匠の事気にしてるのか?」

「え、ええ、まぁ。無視しました…し」

「たまにはいいだろ?あんな嘘つきやがって、あいつ」

「あ、あの…ん…」

喋ろうとする口をまた専務に塞がれた。

「黙って。これが済んだら連絡入れるから…ん…」

「…ん、はぁ」

それから、少し長いキスの雨が降ってきた。