鏡を見て気合いを入れた。

よし、乗り切ろう。私なら出来る。

月曜日、10日間の休暇明け、
いつもの電車に乗り、いつもの通勤コース。何も変わりはなかった。

「おはよう、美玲」

最寄り駅を降りた所で、美玲に会った。

「あ、おはよー。もう大丈夫なの?」

「うん。大丈夫。心配かけてごめんね」

「ううん。少しはスッキリした?」

「そっちも大丈夫だよ。案外スッキリした。実家に帰ってたんだ」

「え?そうなの?いい機会だった、って訳?」

「そうだったみたい、じゃまたね!」

喋りながら、歩いていた事もあり会社に着いた。
私は美玲と別れて、専用パスでエレベーターを呼んだ。そして秘書課に向かった。

8階、秘書課に着いた。

部屋に入る前に深呼吸をした。

「おはようございます。10日間ご迷惑をおかけしました」

頭を下げた。

「おはようございます。高瀬さん、いない間にここも変わりましたよ」

「あ、鈴木さん。おはようございます。話は聞きました。私…」

「高瀬さんのお陰です。みんな限界きてたので、今回の事は申し訳ないけど、乾さん達が悪いんです。大変だけど、頑張っていきましょう」

「はい!」

悪い事があれば、いい事もあるんだな、とおもった。
秘書課の空気が、いつの間にか違う物になっていた。

そして10階の専務室に向かった。
ここも10日ぶり、緊張が体を支配する。

私が使っている机は何も変わりはなかった。仕事が、少したまっているような書類の束があるだけ。

コンコン

返事はなかった。
まだ専務の来る時間ではないか、少し安心して、専務室を開けた。

「な、なんで…」

扉を開けると、ソファに体を沈めて寝ている専務がいた。いないもの、だと思って入った専務室に専務がいて寝ていた。