シャワーを浴び、戻ってきたが、その時にはもう寝ていた彼女はいなかった。

誰か分からない、くそっ。

コンコン

部屋をノックする音が聞こえた。
もしかして、さっきまでここにいた彼女が戻ってきたのか、急いでそのままの格好でドアを開けた。

「おはよう、蓮。どうだ、調子は」

「た、匠か…」

「なんだよ、あからさまなその態度」

「いや、二日酔いがひどいんだ。喋らないでくれ」

様子を伺いながら喋る匠に、昨日俺が誰といたか聞いてもいいものか、悩んだ。

しかし、確認しない事には…

「な、なぁ。匠、昨日俺はかなり酔ってたんだが、高瀬が俺をここに連れて来てくれたのか?」

匠の顔色が変わった。

「は?何で高瀬の名前が出てくるんだよ。昨日、帰ってたじゃないか!昨日は夏帆さんと一緒だったんじゃないのか?」

「夏帆さん?確かにラウンジで飲んでたのは、覚えてるんだが…そこからの記憶が曖昧で…、誰がここへ連れてきてくれたのか…」

「ちょっと待て、蓮。高瀬は帰っ他じゃないか?」

「いや、ラウンジにいたんだ」

「いた?どうして…」

「え?帰った?じゃ、違ったのか…」

「蓮、一晩誰かと過ごしたんだろ?覚えてないのか?」

「あぁ、情けない話、覚えてないんだ。高瀬の声がした気がしたんだが…違ったとなると、あれは誰だったんだ」

匠は何かを考えて、すぐに部屋を出て行った。確認してくる、と。

まさか、夏帆さんとやってしまったのか?
思いが強すぎて、高瀬として抱いてしまったのか?男として最低じゃないか、それが本当だったら…

昨日の夜は、俺にとって今までにない最高な夜だった。そのはずなのに、相手が高瀬じゃないなら、頭が余計に痛くなってきた。それから何時間経ったか…

匠が戻ってきた。
顔を見て分かった。

ああ、そうか。
そうなんだ。
夏帆さんが相手だったんだと…

「蓮、夏帆さんが、父には言わないから、自分との事を考えて下さい。って、言ってたよ」

「そうか、そうなんだな。俺最低だな…」

高瀬と思って抱いたのが、お見合い相手の夏帆さんだったなんて…
あれだけ断っておいて、俺はなんて最低な男なんだ。

高瀬にもう会わせる顔がない…

「高瀬にも聞いたよ。あれからここには戻ってきてないって、いいか?蓮。高瀬にもこれ以上関わるなよ?夏帆さんに失礼だからな」

「あぁ。分かってる。これからは秘書として対応する…よ」

俺が高瀬を思うばかりに、こんな事になってしまうなんて…
そして、夏帆さんにも申し訳ない事をしてしまった。

全て、俺が悪い…