「もしもし?」
「涼香?大丈夫?怪我して早退したって聞いたけど?」
美玲からの電話だった。
「あ、ごめんね。足捻っちゃって…、たまたま連れて行かれた病院で、安静指示出されてね」
「そっか、今から帰るんだけど、行っても大丈夫?」
「え?今から?って今何時?」
今から来ると言われ、そんな時間になってる事に気がついた。
「え?寝てたの?もう6時よ?」
「そうなの?寝てた…みたい」
「本当に大丈夫?疲れてるんだよ、それ。今から行くから待ってて」
「うん、待ってる」
病院から帰ってきてから、6時間以上寝ていたみたい。
そんなに寝不足だったの?私。
程なくして、美玲が有里華を連れて家に来た。
「大丈夫?涼香」
「どうせ、秘書課の人間に何かされたんでしょ?」
「有里華、大丈夫だよ。ごめんね、って今日は葛城さんは?」
「今日は葛城、車で待たせてる。来るな!って言ったの」
「そ、そんな…上がってもらいなよ。なんか申し訳ないよ」
「いいの。葛城も安心して話してきて下さいって言ってたから」
「ほんと、葛城も大変よね。って、話じゃないでしょ?何があったのよ」
「そうよ。会社で怪我って?」
二人から同時に責め立てられた。
この1週間の話をした。
「……」
「……」
二人共、言葉を失っていた。
沈黙が流れた。
そうよね、ないよね、こんな事。
長い沈黙を破ったのは、美玲だった。


