「どうしたんですか?」

「いや、なんでもないよ」

「今、好きになってほしいとか、言ってるんじゃないんです。これからの事考えて欲しいって言ってるんです」

どう言っても、俺に食い下がろうとする。

「今後の事って…。夏帆さんを好きになるなんて事ない…」

「さっきの人が原因ですか?秘書の方ですよね…」

話を遮り、高瀬の事を言い出した。

「…な、なんだって…」

「所詮秘書でしょ。あなたには釣り合わないじゃない。あんななんの取り柄もないような平凡な女…」

「君に何が分かる!」

高瀬を侮辱され、酒が入っていたせいもあり、声を荒げてしまった。

「何よ!父に言うわよ。あなたの会社を潰すのも簡単なんだから!」

「っ…」

こんな事になっても、俺は何も出来ないのか…
潰せるほどの力が鏑木物産にあるとは、思わない。だが…影響がない訳じゃない…。このまま、会社を危うくしていいのか。

「怒らせないで、蓮さん。私はあなたといたいの」

「くそっ…」

酒を飲むペースが早くなっていた。