高瀬と車でホテルに向かっていた。
話をしていて、このまま話を続けていたいと思っていて、パーティなんて出なくてもいいんじゃないか、高瀬に俺の気持ちを伝える方が大事じゃないかと…。

だが、そんな訳にもいかず、ホテルに着いてしまった。
駐車場に車を止め、エレベーターでパーティ会場である10階に向かった。
10階に着くと、すぐに分かる場所に受付け案内が記されていた。

二人でそこへ向かった。

その時、高瀬の表情が少しおかしい事に気がついた。
緊張でもしているのか、すぐにでもパーティから退散した方がいいな、なんて考えていた。

高瀬から視線を外し、前を見ると匠が一人の女性と立っているのが見えた。

誰、だ。

疑問に思いながら、足を進めた。

「遅くなりました、専務をお連れしました」

いつものように、高瀬が匠に話をしていた。

「匠は一人か?ん?そちらの方は?」

社長秘書である匠が一人な訳がないと、そして隣にいる女性の事を聞いた。
その時、高瀬が後ろに下がっていた事に気付いてなかった。隣にいると思っていた。

匠は、彼女を鏑木物産の社長のお嬢さんだと紹介してきた。
今日何度目かの胸騒ぎがした、もしかしたら…

「今日は匠とこちらに?」

「今日のパーティ、お前が夏帆さんをエスコートするんだよ」

嫌な予感が的中する。
見合いだと?
まさか…
隣にいない高瀬を、探す為に後ろを振り返った。

「では専務、私は失礼させていただきます」

高瀬が頭を下げていた。

な、何。
待てっ…高瀬、

高瀬を呼び止めようとしたが、匠に制された。

「社長命令だ」

匠に言われ、俺はその場から動けなくなっていた。

高瀬は、エレベーターに背を向けたまま乗って降りて行った。