Out of Interesting


 日常はなにもない方が幸せだと思う。
 俺の日常は、なにもない。可もなく不可もなくな日々。それが幸せだ。
 というより、そもそも俺は周りに興味が無い。だから周りではなにかが起きているのかもしれないが、俺には関係ないし、どうでもいい。
 今日もいつものように、それなりに話す奴らと一緒に下校して、寄り道もせずに家に帰る。
 寄り道するより、家に帰ってごろごろしていたい。サラリーマンの休日みたいなセリフになってしまった。
 「ただいま」
 『加賀見』と表札に書かれた家のドアを開ける。
 「おかえりー」
 台所の方から母が返事をくれる。
 今日の夕飯は匂いからして……おそらく炒飯だろう。お腹が空いてきた。
 自室へと足を進めようとする俺を、台所から出てきた母が引き止めた。
 「そうだ真琴。前々から言ってたけど、新しく妹になる女の子……」
 またその話か。
 「いいから。もうその話飽きた」
 「飽きたって…。大事な話なのに」
 母の話を途中から無視して自室への階段を上る。
 部屋のドアを開けてリュックを適当な床へ放り投げた。
 ベッドにバフッと身を投げ、寝転がった。
 先程の話だが、どうやら俺に妹ができるらしい。歳も近く、仲良くしてほしいのだと。
 その子はシングルマザーの家庭で、母が訳あっていなくなったとか、その子自身、今は病院にいるとか、複雑すぎてわけが分からない。母がなんで居なくなったのかは俺は知らない。話をちゃんと聞いていないのもあるだろうが。
 しかし、そもそもその子と俺の家はそこまで近い親戚でもないらしい。
 親戚中をたらい回しにされた挙句、この家で引き取ることになった。
 確かに、親がおらず、入院している子を引き取るなんて面倒なこと、お人好しくらいしかしないだろう。
 名前は…、なんと言ったか。聞いたような気もするが、忘れてしまった。
 要は、面倒臭い状況下にいる妹ができるということだ。といっても、今更妹ができたところで、他人としか思えない。心底どうでもいい。可哀想に。
 可哀想という感情は、他人にしか湧かない感情だ。
 もしも自分が辛い目にあったとき、自分を可哀想と思うだろうか。思わない。ただただ辛いだけだ。友人が辛い目にあっていたら、可哀想と思うよりも手を差し伸べたいと思う。
 可哀想と思ってしまった時点で結局他人という認識なのだ。


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 夕食や入浴も済ませ、またベッドの上で寝転がる。
 まだ深夜とは言い難い時間帯。
 明日は休日だというのに、ひどい眠気に襲われた。
 まだ眠ってしまうのはもったいない。そう思うのに、うとうとと瞼が重力に負けそうだ。
 きっと今日の体育がいつもよりハードだったからだ。全身をフル活用して、いつも使わない筋肉まで使ったトレーニングをした。
 瞼だけではなく、全身で眠気を訴えてくる。重たい体はベッドに沈み、そのまま俺の意識も奥底へと沈んで行った。