「雪が融けたら、毎年庭に咲いていた春紫苑(ハルジオン)が咲くね。ここから見える木々も、蕾をつけて花を咲かせる」
「うん」
彼と過ごしたあの場所は、巡る季節の中で、色鮮やかな花が咲いていて、言葉にならないくらいに美しい場所だった。
昨日まで蕾だったあの花が咲いたんだ、ってよく君と笑い合っていたね。
遠い昔のように思えてしまうのは、この小さな白い世界で、彼が過ごすようになってから一年が経とうとしているから。
何処と無く、寂しそうに外を見つめている彼を今すぐ抱きしめてあげたい。
「あの桜の木も、満開になるのだろうね。僕は見れるのかな」
やめてよ、見れるのかな、だなんて。
明日や、その先の日々や未来は不確かなものだけれど、そんな風に言わないでほしい。
まるで、あなたが春にはもういないようなことを言わないでほしい。
私が思っていることなんていつもお見通しの彼は、今にもまた泣き出しそうな私を見て、哀しそうに笑う。



