——桜色に色づいた花が、ひらひらと舞い落ちる。
暖かな愛の季節の訪れを告げるかのように吹いた風が、無数の花びらを宙へと攫う。
「………ありがとう、」
もう亡き人となってしまった、愛しい人の名前が刻まれた墓前の前。
私は合わせていた手を静かに解き、足元に置いておいた花を生けた。
「…今年も、庭に咲いたよ」
誰よりも、この花が咲くのを待ちわびていたあなた。
共に見ようと約束をしたのに、その約束を守れなかったあなた。
本当は、もっと、ずっと一緒に居たかった。
白いドレスを着て、バージンロードを歩きたかった。
彼と家族になりたかった。
巡る季節を笑って過ごして、この手が皺くちゃになるまで一緒に生きたかった。
彼と一緒にしたいことが、星の数ほどあったのに。
「…………、」
儚く散った、あなたの命。
この桜の季節まで生きられないことを知っていても、あなたは強かった。
あなたのいない世界を怖れていた私よりも、ずっと、ずっと強かった。



