私よりも頭一つ分身長が高い彼を見上げて、泣きながら懇願した。
涙なんて見せまいと、耐えてきたのに。
泣き顔が一番美しくないのに、今日の私はそんなことを気にすることもなく、その腕の中でもう当分泣けないんじゃないかというくらい泣いた。
子供のように、わあわあと泣いたんだ。
“お願いだから、私を置いて行ったりしないで”と。
彼は泣き続ける私の背を、ずっと宥めてくれていた。
黄昏泣きをする子供を抱く母のように。
希咲は何も言わずに、困ったように笑っていた。
階(きざはし)を上るのを引きとめられて、どうしたらいいのか分からないかのように。
そして私は気づいたんだ。
私は、ただ願うことしか出来なくて、無力を嘆くことしか出来ないのだと。
彼の命の砂時計がさらさらと落ちてゆくのを、ただ見ていることしか出来ない存在なのだということを。



