もしも叶うなら、私はもう一度この大空に恋をする。




青に握られた手から熱が全身に伝って、体が熱くなる。



体が熱いけど家に着くまではこのままでいたい。



だからお願い。早く家に着かないで。



その願いは虚しく春風が吹き消していく。



今度は青が足を止め、握られていた手が離れた。
一気に手の温もりが風にさらわれて冷たくなっていく。



離れないで。
そう青の手を追いかけたかったけど、今のあたしにはそれができる権利がない。



あたしと青は恋人ではないのだから。



冷たくなってきた手を握り締めて、気になって俯いていた顔を青へと向ける。
青はあたしを見ることなく真っ直ぐ前を向いている。



青が見つめる先が気になって青の視線の先を追いかける。



そこには二人の男女が親しく話をしながらこちらに向かって歩いてきていた。



黒髪だけど、夕日にあたって少し深緑色に見えるサラサラのロングヘア。
サイドの髪は後ろで縛っている女性は楽しそうに笑っている。



「……あ、…っ」



そんな女性の隣にいる男性を見て思わず声が出てしまった。



藍色のフワフワした髪、細められた目は青よりもぱっちりとしている。