すると途端に、志乃は嬉しそうに顔を綻ばせる。



わかりやすい。



撫でるのをやめるとまたすぐに、どこか寂しそうな表情に変わった。



「顔に出すぎだろ」



「だって、もっと甘やかしてほしいもん。
大雅に甘えたい」



お願いするような目でじっと見つめてくる。



今度は俺が我慢する番だ。
この可愛い生き物に耐えなければいけない。



「一日中大雅のそばにいたい。
学校なんて嫌いだ。


大雅が遠く感じちゃう」



我慢しろ、俺。
ここで折れるな。



心で何度そう念じても、今の志乃の言葉が頭の中を支配する。



「……学校、嫌いとかいうなよ。
友達に会えるだろ?」



「それは嬉しいけど…大雅といれるならそっちの方がいい」



「わかったからもうそれ以上喋るな」
「むっ、喋るのもダメなんてひどい」



きっと自分がうるさいからだと思っているんだろうけど、違う。



可愛いことを言葉にするからだ。