「ど、どうしたの?」
言葉に詰まりながら志乃は俺を見上げ、返事した。
その瞳は揺らいでいて、あからさまに顔に出ている。
「そのまま抱きつこうとしたとかじゃねぇよな?」
俺がそう聞くと、志乃はあたふたし始める。
「ち、違うよ…?
ほら、満員電車でぎゅうぎゅうだから大雅に支えてもらおうと……」
苦し紛れの嘘なことぐらい、志乃の顔を見ればすぐにわかった。
「ダメだって言ってんだろ。
特に外とか一番危ない」
もし一緒に行けない時があったらどうするんだ。
こんな可愛い人間を、周りが逃すわけがない。
志乃なら簡単に騙されてついて行きそうな気もするから余計怖い。



