本当に志乃はピクリとも動かなかった。
ただじっと石のように俺にひっつくだけで、固まっていて。
仕方なくそのままでいたけど、ただ切るだけなのに相当な神経を要した。
その後はいつものように志乃を離れさせ、ご飯作りの続きを始める。
その途中に母親がキッチンに戻ってきた。
……が、志乃を見たときの表情はあまり良くなかった。
まだ志乃はそんな俺の母親に気づいてはいない。
多分、聡介さんが間に合わないのだろう。
時計を見れば約束の六時半を過ぎている。
仕事が忙しい聡介さんのことだから、仕方ないのだろうけど…
一番それで寂しい思いをしているのは隣にいる志乃だ。



