「わかったから泣くな。 とっくに俺は志乃のものだろ」 けど、もしそうなら志乃だってもう俺のものだ。 「……して…」 「は?」 その時、志乃が小さな声で何かを言った。 「なら…キス、して……大雅…」 涙で濡れた瞳が、じっと俺を見つめる。 一瞬ここがどこなのかわからなくなった。 親の存在さえ忘れ、このまま壁に押し付けむちゃくちゃにしてやりたい衝動に駆られる。 手をのばしかけた時、なんとかはっと我に返ることができた。 急いで伸ばしかけた手で包丁を持ち直す。