ーーー「……」



先輩に睨まれて怖い思いをしたからか、志乃は帰り道一言も言葉を発しなかった。



ずっと黙ってばかりで。
あっという間に家に着く。



「じゃあまた後でな」



いつもはここで一度は別れ、各自家に入るというのに……



志乃は俺のシャツを掴み、その場から動かなかった。



「志乃?どうした?」



なるべく優しい声で聞くが、志乃は何も話さない。
それ以上にシャツを掴む力が強くなった。



たまたまかもしれないが、そこは先程先輩に掴まれた部分と同じで。



もうすでにそこの部分だけシワだらけだ。