彼女は途中になっていたハンバーガーを口の中に入れると、包み紙を袋に捨てました。

彼女は、運転に夢中になっているあなたを見て、そわそわと落ち着きません。今になって次の話題が思い付かなくなっていました。
あなたを意識し始めているからです。頑なに、そのような素振りを見せなかった彼女ですが、ついに意識していることを自分でも自覚したようです。

自覚をすれば彼女は分かりやすい女性でした。嘘がつけない人なのでしょう。

「……藍川さん、眠いですか?」

「えっ」

急に黙り込んだ彼女に、あなたは車線変更を終えてから声をかけました。

「寝てもいいですよ」

「あ……そ、そうですね、すみません……。まだ大丈夫ですが……もし寝ちゃったら起こしてください」

「立川に着くまでは大丈夫ですよ。つらかったら寝てください」

車通りはすっかり多くなりました。あなたは彼女と会話を楽しむことよりも、ここからは安全に送り届けることも同じくらい重要なのです。彼女が会話を続けても、あるいは眠って運転に集中することになっても、どちらでも良かったのでしょう。

彼女はそれから十五分もせず、眠りに落ちました。