「脇見してた?」

「うーん、どこを見ていたかまでは、ちょっと……景色を見ていたって言ってましたし、そうだったんだと思います。景色綺麗ですし……」

「ふーん、なるほどー」

彼女の主観的な感想に、警察官は仕方なくメモを取っていました。
それから警察官は十分ほど手元の書類に詳細を記載したあと、三者を集めて話をしたいと言いました。青い顔をした梶村さんも、もうひとりの警察官に連れられて、こちらの輪へ入りました。

「まあ、停まってたところにぶつけちゃったってことなんで、物損事故にしておくので、あとは保険会社に連絡してください。そっちで連絡取り合ってね」

「はい……」

「ぶつけられた方もね、まあ大丈夫だとは思うけど、後から首なり頭なり痛くなることもあるから、一応病院行ってみてください」

「はい」

警察官はマニュアル通りに早口な説明をした後で、あなたと彼女には「では行って大丈夫ですよ」と解散を促しました。あなたは待ってましたと言わんばかりに、停めてあった車へとさっさと戻ってしまいます。
警察官のふたりは梶村さんに対してはまだ色々と注意があるようで、取り囲んで「初心者のうちはよく前を見なきゃ」だとか「ひとりで遠出はよくするの?」などと尋問されているのが聞こえてきます。

あなたは気にせずエンジンをかけましたが、彼女はしばらく後ろの様子を見ていました。