私が軽く抵抗しただけで、彼はすぐに私を手放した。

無表情で、私の手に傘を握らせた彼は力なく呟いた。

「ごめん」

その寂しそうな横顔を見てしまい、ガラガラと音を立てて私の心はくずれそうだった。

なにを謝っているのだろう。

先生だってことを教えてくれなかったこと?

10日以上付き合えないってこと?

それとも、今、キスしたこと?

彼から目を背けていると、足早に立ち去る足音が聞こえた。

胸が苦しくなるくらいに、ドキドキしていたけれど、もう、彼のことを何も考えたくなかった。

こんなに苦しいのなら、もう私の中から消えて欲しいと願った。

だけど、少しも消えてくれない。

彼の笑顔も、怒った顔も、冷たい態度も。

(僕は初めの予定通りに10日間だけ君と付き合うつもりでいる)

そして、私の胸を突き刺したあの言葉も、私の中から少しも消えてくれそうになかった。